ノスタルジア

僕にはお気に入りの場所があった。

一軒の喫茶店

子供の頃から親に連れられて…

青春時代には恋人や友人と…

時には誰にも邪魔されずに、一人物思いにふけったり…

そんな人生の足跡と昭和の残り香を感じながら、そこでコーヒーを頂くのが至福の時間であった。 

一日に朝、昼、夜と通ったことも。

そんなに惹きつけられる魅力は何なのか…

とにかくその空間が、僕をノスタルジックな想いに誘うのだ。

そしてもう一つは、そのお店で働くウェイトレスさんである。

とっても穏やかな声のトーンに、包まれるような感覚。まるで毛布に包まれるような心地よさ。一つ一つの所作に至るまで、こんな好感を感じる接客をするウェイトレスさんは、他のどの店でも感じたことは無かった。

それも大きな魅力の一つであった。

また、店内に流れるBGMも、僕の嗜好にピッタリなのだ。

何から何まで、なのである。

そんな四十年近くの歴史を刻む、僕のお気に入りの場所で、その日もコーヒーを飲みながらスマホを眺めていた。

ウェイトレスさんが、水のおかわりを注ぎに来てくれた。

すると…

つぶちゃんが入ってきた。

「拳ちゃん、あの人の誕生日を聞いてごらん。」

つぶちゃんからのミッションが…

誕生日といえば、僕はカウンセリングを行う時に生年月日を聞いて、その中に含まれる情報を加味しながら行う。

占いといえばそうだが、それほど深い知識があるわけではなく、生年月日の情報を読み解いて話を進めていけば解決に辿り着くというスタイルである。

カッコよく言えば[天の声]か…

話した事が現実になる…

それが僕のスタイル。

「きっと生年月日に、何かメッセージが隠されているのかな…」

そんな程度に思いながら、

「今日はそんな気分じゃないから、今度聞いてみるね。」

つぶちゃんに、そう伝えた。

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