ゲームの始まり

お店ごと彼女を断ち切る決断をしたものの、僕の中に彼女の残像は残り続けている…

決断に後悔があるわけではない。

向き合う事すら出来ない[恐怖]を感じるようになってしまい、逃げるのは当然であった。

断ち切れば楽になるかと思ったが、そう簡単なものではなかった。

離れれば、懐かしく思えてしまう…

それに加えて、相変わらずの僕の中の魑魅魍魎(ちみもうりょう)たち…。

通常、我々人間は、意識を外側に向けて生きている。

外側の刺激の中に、楽しみや幸せを見いだそうと生きているのだ。

しかし、僕の意識は完全に内側へと向いている。

内側の汚れと向き合っている…

その汚れと対峙していると、再び感化されてしまいそうな自分と、何とか抗っている自分がいる。

その闘いは、千本ノックの様に止む事はない…

内に向いた僕の意識…

果たして出口はあるのだろうか…

苦しい…

苦しみの嵐の中、唯一雨風をなんとか凌げる場所が、つぶちゃんのお墓であった。

僕の内側の闇の中で、つぶちゃんの導きが聞こえる…

「拳ちゃん、真っ直ぐ進むんだよ。一つ一つの汚れと向き合うんだよ。その怒りが、悲しみが、憎しみが、どうしてそこに存在するのか、その答えを見つけてごらん。」

答えは、すぐに見つかった。

エゴである。

自我があるから、自分と合わないものに対し、怒りや憎しみは湧き上がる。

「そう。エゴを手放すんだよ。それが、今向き合っている[汚れ]の掃除方法なんだよ。」

つぶちゃんメッセージを受けとった時、ハッと気づかされた。

自分が悪かったのに、エゴが強く気づいていなかった…

自分の事が精一杯で、他者への思いやりにかけていた…

僕なんて、こんなもんなんだ…

やっと、本当の自分の姿に気づけた瞬間であった。

まるで、自分自身を俯瞰(ふかん)して見ている感覚が芽生えたのである。

「拳ちゃんの想いが、ボクを虹にしてくれたんだよ。そして、それは拳ちゃんの心でもあるんだよ。拳ちゃんの中には、そんな[愛]が存在している。その愛を輝かせるんだ。拳ちゃんなら必ずできる。今度はボクが[龍宮城]につれていくからね。彼女の待つ[龍宮城]へ、一緒にいこうね!」

次の瞬間…

僕の意識は現実に引き戻された。

まるで旅から戻ったような…

そんな感覚であった。 

僕の内側で、立ちはだかる[負のエネルギー]達との闘い…

それは、自分のエゴとの闘いだったのだ。

しかし、エゴを捨てるという事は、自分が無くなる事を意味している。

それは、すなわち[死]であった。

僕は生きながらにして[死]を体験している…

そんな感覚が生まれた時、僕の中が震え始めた…。

何かが動き始めている…

僕の中で…

一体、これは…

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