一期一会

国道を車で移動していた時のこと…。

道路に黒い塊が…。

すぐにピンときた。

カメだ!

暖かくなると道路に出てきては、車に轢かれて死んでいる…。

そんな姿を見るたびに心が痛む。

チャンスがあれば必ず救う。

助けても、また同じ危機に合うかも知れない。

それでも、この縁は必ず救う。

今回の発見場所は、国道とはいえ道幅が狭く、大型トラックだと電柱や対向する大型トラック同士のミラーが接触しそうな区間で、大きな塊は恐怖に怯えながら固まっていた。

甲羅の中に閉じこもり、恐怖と闘っていた。

道路を横断しようとしたが、何台も車がやり過ごすうちに諦めたのだろう。

すぐにミラーを確認し、後続車をチェックする…。

ラッキー!

いない!

すぐにハザードを点灯させて車から飛び降りると、大きく成長した塊を抱えて運転席へと戻った。

放してやる適当な場所も見当たらず、とりあえず後部座席の床に置いて、一旦自宅まで連れてきた。

つぶちゃんの生前の住処に入れてみるも、野生で育ったサイズなので、つぶちゃんに手向けた花瓶をひっくり返すわ、まるでゴジラが街を破壊するかの如くであった。

しょうがなくタライを用意して、その中で暫く我慢してもらう事にした。

そして乾燥エビを与えると、パクパクと美味しそうに食べてくれた。

問題は、何処に返すかだ…。

今、カメも外来種が問題に上がっているが、処分なんてありえない。

何処か場所を決めなくては…。

そんな想いに駆られながらも、済ませなくてはならない用件があり、それを終えた夕方に様子を再び見に行くと…。

タライの中は、水面に映る僕の姿だけだった…。

野生は逞しい。

タライの縁を乗り越えて、見事に脱走していた…。

まだ、その辺りを這っているんじゃないか…。

かすかな希望を胸に、辺りを見回る。

いくら助けたカメとはいえ、自分の手で放してやりたかった…。

納得の行く場所で…。

こんなところで逃したら、助けた意味がないじゃないか…。

辺りを探すも無情にも日没となり、捜索は諦めざるを得なかった。

ご近所さんに事情を伝え、見かけたら一報をお願いした。

こんな結末になってしまったけど、想いを込めた行いだった…。

そう自分を納得させた。

一瞬のご縁だったけど、頑張って生きるんだよ。

そんな想いが込み上げた。

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