さよなら、ネコニャン…

ネコニャンはお世話をされているうちに、居心地の良さを感じ始めているのだろうか…。

ケージ内に取り付けられたハンモックの上で、スヤスヤと眠っている姿が微笑ましい。

何処で生まれて、どんな体験を経て、僕のところに辿り着いたのだろうか…。

見守りながら感じること…。

それは、とにかく怯えている事だった。

まるで、声帯が機能してないのかと思うくらいに鳴かないし、人の動きを常に気にして、些細な音にも敏感に反応する…。

早く、この環境に慣れてくれる事を祈るばかりであった。

やがてネコニャンは、ケージの中だけではストレスが溜まるようになり、中で暴れるようになった。

一つの決断を迫られる。

ケージから出してやらねば…。

やって来て、二週間程が経過していただろうか…。

コミュニケーションも取れ始めて来たので、いよいよ家の中で放す決断をする。

常に存在に気を配り、くれぐれも外には出さないようにと心に誓う。

ネコニャンも解放感からか、元気に廊下を走りまわる。

そんな姿を見ながら、ネコニャンの未来が幸せになる事を祈った。

やがては、僕の足元で顔を擦り付けてくるようになり、抱っこしても身を預けてくれるようになっていった。

順調に事が動き始めたと思った矢先に、それは突然訪れた…。

ある日の夜のこと…。

ネコニャンを見かけてない事に気づく。

すると、玄関の扉が少し開いていた…。

絶句した。

ネコニャン…。

慌てて外を、懐中電灯で照らしながら探す…。

いない…。

もう一度、家の中を探しまわる…。

いない…。

ネットで情報収集する。

逃げたネコは、脱走当日はそんなに遠くには行く事はない。

ネコは鼻が効くから、トイレを置いて匂いで誘き寄せる事などの知識を得た。

早速、トイレを玄関先に置いて、[こっちだよ!]とメッセージを風に乗せた。

一時間が過ぎ、二時間が過ぎ、時は深夜へと移り変わる…。

心配で、もう眠る事もできない。

徐々に僕の期待は、諦めへと変化していく。

いつの間にか、僕は自分を慰めていた。

突然僕のところに現れたけど、去っていくのもネコニャンの意志…。

それを僕のエゴで束縛はできない。

野良は厳しい世界だけど、頑張って生きるんだよ。

ネコニャンの幸せを願っているからね…。

もしも、この世を去ることになったら、僕を引っ張って呼ぶんだよ。

僕が弔うからね。

この世を冒険してね…。

忘れないからね…。

眠れない僕は、運命と向き合っていた。

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