もう随分長いこと、内側の[負のエネルギー]や[汚れ]との、浄化へ向けた闘いは続いている。
五年…
いや、六年か…。
内側の浄化…
それは、自分の過ちに気づき、身の程を知り、後悔と懺悔を繰り返す。
やがて[奥]に進むにつれて、[汚れ]ばかりではなく、僕の中に存在していた[愛ある行動]と[再会]する事ができた。
埋もれていた[愛]の記憶が甦る。
それは、
僕が22歳だったか…。
バブル景気に沸き立つ時代…。
僕は、深夜のコンビニに弁当を配達するアルバイトをしていた。
2tトラックに弁当を積み込み、30件近くの店舗に配達する。
当時のコンビニは24時間営業は少なく、僕たちは鍵を預かってシャッターや自動ドアを開閉していた。
その鍵の数も凄いのだ。
シャッターと自動ドアの鍵…。
それが30店舗近くあるわけで、60種類近くの鍵を常備して、それを素早く見つけ出すのもテクニックの一つであった。
配送の出発は、深夜の1時くらい。
鍵を開けて店舗に納品するわけだが、店内の暗さも店舗によってバラつきがあり、真っ暗闇の店もあれば、小さな灯りが親切に迎えてくれる店もあった。
真っ暗闇の中で納品していると、後ろに酔っ払いが入って来ていて、心臓が止まるかと思った経験もある。
そんな中で、事は起きたのである。
いつも深夜の2時過ぎに到着し、納品を済ます店がある。
その店の作りは、パン屋さんの様な佇まいで二階が住居となっており、五十代のおばさんが店をやり繰りしながら暮らしていた。
その店は深夜2時まで営業しており、到着した時に運が良ければ店におばさんが残っている事もあり、そんな時は鍵で開ける手間が省けるのだ。
それが、その店に着く時のお決まりの[願い]であった。
その日は…
残念…
真っ暗で、シャッターが降りていた。
この店の中は真っ暗闇で、シャッターを開けてそのまま進むと、商品陳列の冷蔵棚があり、その電源ランプの微かな光が[ここだよ]と手招きしてくれている。
その電源ランプを頼りに進み、その前に降ろして終了となる。
荷物を抱えて店内へと進む…
すると一瞬、
焦げたような匂いが鼻をかすった。
アレ…?
荷物をとりあえず降ろして、真っ暗闇の中を犬のように鼻をクンクン嗅ぎ回るも、これといった異常は見当たらない。
気のせいだったのか…。
それとも、外から入ってきた匂いだったのか…。
とにかく、暗闇の中を納得できるまでチェックするも、異変を知らせるものは無かったのである。
気を取り直してトラックに乗り込み、次の店舗へと目指す。
深夜なので信号は点滅となっており、移動はスムーズに進む。
次の店舗まであと少しという時、僕の中で胸騒ぎを感じた。
もしかして、僕の見落としがあったとしたら、おばさんが焼け死んでしまうかも…。
そんな後悔を残したくなくて、僕はトラックをUターンさせた。
店に戻り再びシャッターを開けた時、僕は驚きに包まれた。
店内が煙で真っ白になっていた。
当時は携帯電話など普及しておらず、伝票から電話番号を調べて、店の外に設置されていた公衆電話から電話した。
すると、店舗二階から電話の鳴る音が聞こえ始めた。
早く出て…!
そんな焦る僕の気持ちとは対照的に、寝ぼけて迷惑そうな声でおばさんが出た。
事情を説明すると、一気に正気を取り戻して二階から降りてきた。
照明をつけると、レジの奥の事務所が火元であった。
タバコの吸い殻の溜まった灰皿の上で、火が壁に広がろうと踊っていた!
発見が早かったので、バケツに水を汲み消化する事ができた。
事情を聞くと、その日は店番を大学生の息子に頼み、おばさんは体調を崩して休んでいたらしい。
息子が店を閉めた直後に、僕が到着したのであった。
息子の不始末を、僕がフォローする事ができた。
あのまま次の店で納品していたらと思うと、自分のとった[選択]でありながらも誇らしく思えた。
悪友の同僚が言った。
「俺が配ってたら、おばさん死んでたな…。」
そんな、埋もれていた[愛ある行動]の記憶が目を覚ました。
大掃除中に発見した、誇りを被った[大きな愛]の話。
自分の中に眠っていた[愛]を再発見できたという事は、僕の中の闇が明け始めた証だろうか…。

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