目的地

車の免許を持たない学生の頃は、鉄道の電車を利用して移動したものだ。

性格からくるものなのか、電車に揺られながら心は目的地の事しかない。

目的地の駅までが待ち遠しく、車窓から景色を眺めてみても心ここにあらずである。

一つ停車駅を超える度に、心の中で指折り数えた。

「あと、もう少し…」

やっと辿り着いた目的地の駅で電車から降り、改札を出ると大きな解放感が内側に広がるのである。

そして、水を得た魚のように目的地を目指すのだ。

いざ目的地に着いてみると、[そんなに慌てなくてもいいのに…]と言われそうなくらいに、穏やかな雰囲気が迎えてくれる。

波だっていた心に、取り越し苦労を感じる。

その度に僕は、この落ち着かない心の動きは何なのかと訝しく(いぶかしく)思うのであった。

せっかちという表現では、何かもの足らない…。

[何か]に急かされているような…

生き急いでいるような…

これも、僕の中に宿る[魂の記憶]からくるものなのかも知れない。

しかし、天は僕に伝えてくれている。

慌てる必要なんてないよ。

ゴールはいつか必ずやってくる。

[今]を感じるんだ。

[今]を楽しむんだ。

[今]を学ぶんだ。

その積み重ねがゴールへの道。

目的地は穏やかに、僕の到着を待ってくれている。

慌てる必要なんてない。

[今]だけを感じて、穏やかに生きていけばよい。

[今]という景色を味わうことが、[生きる]というテーマの正解なのである。

ちゃんとゴールは待ってくれている。

コメントを残す