[死]の疑似体験

[死]…

それは、[肉体]と[魂]の分離のとき…

双子のお笑いコンビ、[ザ・たっち]の鉄板ネタ[幽体離脱~!]である。

今回は、そんな[肉体]と[魂]のお別れを、生きながらにして疑似体験しているお話。

それでは…。

映画を観るならレイトショー。

これがボクの慣例である。

一番の魅力は客が少なく、ゆったりとした気分で、安心して観れるから。

安心とは…

近くの客の飲食の音に、邪魔されるリスクがほとんど無いからである。

そして、席選びも余裕の間隔がとれるから。

僕一人の、貸し切り上映もあった。

ちなみに僕は、エンドロールまでしっかり観るタイプ。

あのエンドロールこそが、余韻に浸らせてくれるんですね。

やがてエンドロールも終わると場内に明かりが灯り、一人また一人とロビーへと出ていく。

それでも僕は席を立たない。

場内に一人、ポツンと腰を下ろしたままスクリーンを眺めるのである。

今までそこに映し出されていた、ドラマという巨大なエネルギーは幻であったかのように消え去り、そこには無機質な白い幕だけが吊されている。

しかし、映画の[残像]や[余韻]は、確かに僕の内側に刻まれている。

僕は、その[余韻]と[残像]をお家にお持ち帰りするのである。

[魂]も我々の[肉体]に宿り、壮大な人生ドラマの[余韻]と[残像]を刻み、帰っていくのである。

やがて清掃スタッフが場内へと入ってくると、僕の[帰る]タイミングとなるのだ。

「ありがとうございました。」

と声をかけてくれるスタッフに、

こちらからも「ありがとう」

と伝え、場内を後にする。

そして車に乗り込み、移動の道中も[余韻]と[残像]が心にうるおいを与えてくれる。

これが僕の[幽体離脱~!]の疑似体験なのである。

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