ゆかり

今日も暑かった…。

加減を失ってしまったかのような太陽が、ようやく西の地平線へと移動した頃に、お墓の供花に[労いの水]を届けに向かう。

辺りは薄暗くなり始め、夕暮れの静けさが漂う…。

猛烈な暑さの中で、眉間にシワを寄せながら生きる人々のエネルギーも鎮静へと向かう。

それは、クライマックスのエンディングを終えた、映画のエンドロールの静寂にも似ている。

一日が終わる…。

これといった大きな刺激もなく、流されるかのように暮れていく日々…。

これでいい。

[刺激]が無いという事は、平和で心が[凪]である証なのだ。

そんな、今ここに在る自分を取り巻く[環境]に感謝できれば、[幸せ]に生きられている証。

お墓に到着し供花に目をやると、そこには菊の花びらをソファにしてくつろぐ、一匹のアマガエル君が微笑んで迎えてくれた。

[待ってたよ]

そんな言葉が聞こえて来そうなくらいに.僕の視線と絡みあう。

早速、ポケットからスマホを取り出し、いつものように[記念撮影]をカシャ。

アマガエル君は動じる事なく、ソファの上でくつろぎ続けている。

邪魔をしないように水の交換はやめて、そっと水を足すだけにしておいた。

カエル君は、僕の動向に視線を送り続けている。

明日、またここに来た時、このカエル君はいなくなっている。

そう考えると何だか、一匹のアマガエルとはいえ、意味あるご縁(一期一会)に感じてならないのである。

このカエルの瞳が、そう語っている。

[わかる?ボクだよ…]

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