[ツインソウル]との出会い…。
それは、自身の内側に潜む[闇]との闘いに発展した。
自分の内側に蔓延る[悪魔]との戦いに勝利し、内側を[愛]で満たすこと。
これが、[ツインソウル]との出会いに隠された[ミッション]であった。
すなわち、[魂の浄化]なのである。
傷ついた[魂]を癒すのである。
僕がまだ、そんな強烈な[ミッション]と向き合う遥か前の話である。
1990年代の中頃の記憶…。
同じように、内側の[闇]と闘い続けたボクサーがいた。
その男の名は、
ジョニー・タピア。
ニューメキシコ州の田舎町アルバカーキー出身の、ボクシングの元世界チャンプである。
彼の輝かしい功績を、サクサクっと紹介すると…
WBO Jr.バンタム級(現スーパーフライ級)チャンピオンで13度の防衛を果たし、その中にはIBFの同級チャンピオンであったダニー・ロメロとのチャンピオン同士の統一戦の勝利も含まれる。
その時の興奮は、今でも僕の胸を熱くする。
この二人、実は出身が同郷であり、幼い頃から親交があった。
ダニーの父が、二人のボクシングコーチであったのだ。
そして成長と共に、二人の人生のコントラストは[善]と[悪]、[光]と[闇]へと別れていった。
エリートチャンピオンのダニー・ロメロに対し、悪童のジョニー・タピア…。
そんな二人を結ぶ[因縁]は、団体違いの同じ階級のチャンピオン同士としてリングで対峙する事となる。
当時、二人の出身地であるアルバカーキーは、そんな[善]と[悪]の戦いに町を二分する騒動にまで発展した。
[アルバカーキー シビル ウォー]
[アルバカーキーの市民戦争]と謳われた。
気を休める事も出来ず、一進一退の展開を固唾を呑んで見守る。
ジョニーは軽快なフットワークを活かし、また上体を巧みに操りダニーのパンチをかわしていく。
一発で相手を沈める強打をもつダニーに対し、ジョニーは素速い動きと回転の速い連打で向かいあう。
試合はスリリングな展開を保ちながら最終ラウンドまで進み、結果は判定で[悪]が勝利した。
しかし、ジョニーは[悪]といえど、みんなに愛されたボクサーであった。
それは彼の人懐っこい性分と、類い稀なボクサーとしての才能が引き寄せたものであった。
そう、もう一つある。
忘れてはいけない。
[同情]である。
それは、彼が生きてきた人生に対して…。
実はジョニーとは親交があり、僕にそのきっかけを与えてくれたのが彼の[生い立ち]であった。
彼はまさしく、[暴力]の世界に生まれ落ちた男であった。
父親は彼が生まれる前に殺害され、更に母親は彼が8歳の時に目の前で誘拐されて、後に遺体となって発見された。
その出来事は、彼の内側に大きな[傷]となって残り続ける事となる。
彼はケンカに明け暮れ、たびたび問題を起こすように…。
母親の父であるお爺さんの勧めでボクシングを始める事となる。
しかし、今度は叔父が彼の試合を賭けの対象にしていた為に、負けようものなら暴力が待っていた。
ジョニーの内側の[傷]は、成長と共に大きくなっていく。
やがて彼は、その苦しみから逃れる為にコカインに手を出してしまう。
当時、ボクシングの才能は誰もが認めるものとなっていたにも関わらず、コカインの使用を理由にボクシング界から離れる事となる。
その頃である。
海外のボクシング雑誌で彼のエピソードを知り、僕はこのバイオレンスに包囲されたボクサーに興味を持ったのである。
それから、どれだけの時が経ったかは定かではないが、ジョニーがボクシング界に復帰してチャンピオンになった事を知った。
僕は何故か、嬉しい気持ちに包まれた。
「良かった。」
「報われた。」
そんな想いを伝えたくなり、僕はジョニーに手紙を書いて伝えた。
アルバカーキーの自宅のアドレスを調べて送るも返事はこず、それでも諦める事はなく毎日ポストを開けるのが楽しみとなっていた。
何故かしら、根拠のない自信があった。
必ず、返事は来る。
そう信じていた。
ある日の事。
日課のポストチェックに向かうと…
ポストが飲み込みきれず、大きな封筒が口からはみ出していた。
封筒の素材も、見慣れたものとは少し違った。
もしかして…。
期待が高まった。
そして封筒をポストから取り出すと…。
つづく…

コメントを残す