罪と癒し 後編

車の傷を確認した後、もやもやした内側を整えようと思い、僕はつぶちゃんのお墓の前にパイプ椅子を運んだ。

ローソクと線香を手向た後に、腰をおろして目を瞑り手を合わせる。

そして、

つぶちゃんに語りかける…。

“昨夜、僕はワンちゃんを車ではねてしまったよ…。どうか、ワンちゃんが無事でいますように…。つぶちゃん、もしもの時はワンちゃんを導いてあげてね。今回の[出来事]は僕にとって、いったいどんな[意味]が含まれているのかな?”

そう呟き、目を閉じたとき…

僕の内側に[景色]が映し出されたのだ!

それは30年以上も前の記憶…。 

僕は22歳だったか…。

トラックの運転手をしながら生きている…。

真夜中の静まり返った街を抜けてゆく…。

そこに現れた白い野犬…。

トラックの性質上、ハンドルで交わす事は難しく、ブレーキを踏むも咄嗟に止まる事など出来ず…。

次の瞬間、衝撃を感じた。

野犬の安否に、不安と希望を抱えながらトラックを降りると…。

そこには、横たわった野犬の姿が…。

不幸中の幸いか、野犬は目を開けている。

出血はないようだ。

しかし、骨折しているようで歩ける状態ではなかった。

冷静に…。

落ちつけ…。  

考えるんだ。

どうするべきか…。

時間は深夜3時くらいであったと記憶する。

道の真ん中で倒れる中型の野犬を抱えて、僕は道路の脇の草むらに寝かせた。

野犬の目が僕を見つめている…。

野犬を撫でる僕…。 

「ごめんな…。」

そして、

僕の出した[答え]…。

もう数時間もすれば夜が明ける。

草むらの近くには民家も多く、子供たちも通学で通ることだろう。

そんな期待を込めて、僕は詫びながらトラックへ乗り込んだ…。

そう…。

野犬を置き去りにした記憶が、今回の一件から甦ったのである。

30年以上の時の流れに埋もれてしまっていた僕の[内側の汚れ]が、今再び日の光を求めて[姿]を現したのである。

そうだったのか!

昨夜の[出来事]が僕に降りかかった意味が、理解できた瞬間であった。

昨夜、[犬をはねた出来事]は、僕の記憶の中に埋もれていた30年以上前の、その[野犬の叫び]を届ける意味があったのである。

僕が様々な[命]と向き合い、僕の[想い]の中でその[命]たちを包み込み、そして癒してあげる供養…。

それを、[あの時]の野犬が求めている。

[ボクを忘れてるよ!]

大丈夫!

今の僕ならできる。

やっと、精算できる時がきた。

「知らせてくれて、ありがとう。」

「必ず、僕の想いの中で癒すからね。」

[あの時]の場面を思い起こし、そう伝えた。

僕の[想い]は時空を遡り、[あの時]のシナリオを書き換える。

僕の想いで癒す事ができた時、[あの場面]から野犬は消えている。

そして野犬は、もっと安全な場所に存在するのだ。

そして、

あの[野犬の姿]こそが、僕の内側の[傷]の正体でもあるのだから。

僕でしか、あの野犬を癒すことはできないのである。

野犬の抱えた

[絶望]

[怒り]

[憎しみ]

[不安]

[恐怖]

そんな[負のエネルギー]を、

僕は[虹]に変えてみせる。

コメントを残す