かえ~るくんの寝返り

昨年末に、こんな出来事があった。

ご近所さんが地面に設置してある水道メーターの蓋を開けて、片手にスコップを握りしめて何かをしていた。

挨拶しながら近づくと、水道メーターの中に土が入ってしまい、それを掻き出しているところであった。

しばらく眺めていると、その土の中にカエルを発見した。

「あっ!カエルがいるよ!」

僕は咄嗟に声を上げた。

すると、

おばちゃんは知っている口ぶりで

「そう。今、私が土を掻き出してたら、この中で冬眠してたみたいで…。そのままにしてやって!」

と返ってきた。

しかし、よく見ると…

おばちゃんには言わなかったが、背中の皮が少しめくれてしまっていた。

スコップの先が当たったのだと想像した。

おばちゃんの言うとおり、このままにするのが最善かな。

ここで僕が余計な“チカラ”を加えると、僕の“エゴ”が逆効果となるかもしれない…。

あとは“天”にまかせよう。

一旦は、そう結論に至ったものの、あのまま土を被せて蓋をしてしまったら、あのカエルは外に出られるのだろうか…。

そもそも、どうやってあの中に入ったのか…。

背中の傷は大丈夫なのか…。

そんな様々な“不安”が湧き上がり、結局は自分の“エゴ”に負けることとなった。

おばちゃんに事情を説明すると納得してくれたので、寝ぼけたカエルを手のひらに乗せて持ち帰った。

さぁ、どうするべきか…

すぐに閃いたのは、つぶちゃんのお墓の横に埋めてあげよう。

そこには“仲間”もいっぱい集まってくる。

スコップで穴を掘り、土をほぐして優しく被せた。

これでいいのだ。

気分も落ち着き、やれやれと思っていると日が暮れてきた。

陽が落ちて夜になると、風が強まり気温がぐっと下がってきた。

カエルの事が胸に浮かぶ…

凍死しちゃうかも…。

生き物たちは皆、すべて環境を理解した上で冬眠場所を探すものだ。

僕の“エゴ”で下した判断が、あの小さな命を奪ってしまうかも…。

僕は暗闇の中、懐中電灯を持ってつぶちゃんのお墓に向かった。

またスコップでダメージを与えないように、細心の注意を払いながらカエルを掘りおこす…。

寝ぼけたカエルを手のひらに乗せ、用意した虫かごに入れてみた。

さぁ、どうする…。

そこで閃いた。

昨年の夏、我が家にクワガタが飛んできて、その時に飼育用に買ったクヌギがあるじゃないか!

ふかふかの柔らかく、そして優しい手触りのクヌギを虫かごの中のカエルに被せてあげた。

やれやれ、これで一件落着だ。

そう思うも、

一応ネットで調べてみると…

“水分をちゃんと与えてあげないと、気づいた時にはミイラになっちゃうよ。”

と“天の声”が記されていた。

以後、まめに霧吹きで水分を与えながら、

このクヌギの中で“夢”を見ていてくれると信じて、新年を迎えることとなった。

今年の冬もどちらかといえば穏やかで、昼間は陽射しが当たると暖かく感じる日が多い。

虫かごを陽射しに当てて、クヌギの“内側”に宿るカエルくんが“温まりますように…”

そんな願いを胸に巡らすと…

想いが届いたか、シンクロするかの様にクヌギの“毛布”を蹴飛ばして、カエルくんが姿を現した。

背中には

“生きてるよ”

そんなメッセージが書かれてる様だった。

あと、3ヶ月くらいかな…。

sweet dream!

ねっ、カエ~ルくん。

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