寓話

毎年、春の訪れと共に、つぶちゃんのお墓には様々な“命”が訪れる。

そして、

それは秋の入り口まで続く…。

蝶々や蜂やてんとう虫…

トカゲやカタツムリやカエルたち…

最近では海外から持ち込まれたと思われる、名前もわからないような虫たちもやってくる。

一期一会のご縁もあれば、

しばらく“そこ”を根城にするものも…

カエルやトカゲたちは不思議と、つぶちゃんのお墓に住処を構える。

僕の日課である、つぶちゃんのお墓にお供えの水を交換しに行くと、みんな元気な姿を現してくれるのだ。

今年は特別な猛暑という事もあり、新鮮な水を届けると“待ってました!”とばかりに、トカゲや蜂たちが集まってくる。

小さな“命”たちも、

この酷暑を生き抜くことで精一杯なのだ。

そんな“景色”の中で、つぶちゃんのお墓で暮らす一匹のアマガエルの話…。

まんまるの愛嬌たっぷりの目玉で、いつも僕の姿を見つめてくれる。

特別に警戒心を抱くこともなく、

まるで意思の疎通ができているかのように…

そのアマガエルからは“安心”が伝わってくる。

そんなアマガエルに、

「暑いな~…元気か?」

そんな言葉を投げかけてみる。

当のアマガエルは、つぶちゃんのお墓の供花用に据えたペットボトルの口元に身体を差し込んで、中の水を利用して身体を冷ましていた。

何とも、可愛いらしい光景である。

「動いちゃダメだよ。」

とお願いして、スマホでカシャ!

もう一枚…

日々の“向き合い”の中で、このアマガエルの元気を確認できると心が和む。

そして今日…

いつものように、つぶちゃんのお墓を訪ねると…

“小さな命たち”の暮らしに役立てばと思い設置したシェルターがあるのだが、その水を溜める窪みの中にアマガエルの背中を発見した。

「今日はここにいるのか?今日も暑いな…。」

そう言葉をかけながら、アマガエルの背中に向けて水を流してやった。

僕の予想に反して、アマガエルは反応することなくジッとしている。

まさか…

そんな不安を感じながら、

指先で摘み出してみると…

すでにアマガエルはぐったりしていた。

まだ身体の劣化は見られず、

チカラ尽きて間もないところを発見できたと想像できた。

良かった…

見つけてあげられて。

僕が心を込めて、弔ってあげるからね。

“小さな命”たちは、この大自然の中の何処かでチカラ尽き…

そして、

朽ちていく…。

それが常なのだ。

しかし、

つぶちゃんのお墓で“ご縁を紡いだ命たち”は皆、僕の弔いによって“寝床”に納まるのである。

まるで、

僕の“潜在意識”に刻まれた“約束”であるかのように…。

法衣に着替えて読経を勤めた後に、僕は亡骸に線香を塗した。

ありがとう…

その言葉とともにティッシュペーパーで包むと、アマガエルは“寝床”へと納まった。

つぶちゃんのお墓の横で…

人間の人生に起きる“出来事”として計るならば、ほんの微かな春風が頬を撫でた程度の“出来事”かも知れない。

しかし、

この“ピュアなご縁”を大切にしたいのだ。

そして、

あてにならない記憶から消えてしまったとしても、いつかまた思い出すキッカケとなればと思い、写真に残したりblogに記録を書き残すのである。

僕の生きた証を…

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