僕がジョニーの存在を知ることとなった当初は、彼の胸の中心部分には[マリア様]が彫り込まれていた。
それは彼にとって[母]の象徴であり、又は彼の内側の闇を照らす一筋の[希望の光]であり、彼の内側の[悲鳴]の表れでもあったのだろう。
ポーリーとの防衛戦を迎える頃には、彼の身体は沢山の[天使たち]や[神々]に彩られていた。
当時は、こんなにtattooが増えているが、試合に向けて集中できているのだろうかと疑問を感じた。
しかし今思うに、彼の身体を埋め尽くす神々のtattooこそが、彼の内側の[闇]の拡大の現れだったのだ。
彼は苦しんでいたのだ。
[神]に救いを求めていたのである。
ポーリーとの試合が近づく中、彼の元に地元警察から連絡が入る。
実は彼の母親を殺害した犯人は、24年間判明する事なく、時だけが過ぎてきた。
彼はあるインタビューで答えていた。
「オレのボクシングの原動力は、母を殺した犯人への憎しみだ。対戦相手を犯人だと思い戦っている。」
その犯人が判明したとの連絡であった。
そして、犯人は数ヶ月前に交通事故で死亡していた事実を告げられた。
法に裁かれる事なく、この世を去っていった不条理…
ジョニーは複雑な心境に追い込まれていった。
試合が迫っているというのに…。
ジョニーの試合はビッグマッチであり、ペイパービューも販売されており、試合のキャンセルは不可能な状態であった。
そしてジョニーは、その[怒り]を原動力に変えてリングに上がる決意をする。
そんな予想外のダメージを受けながらも、タイトルマッチの当日を迎えた。
つづく。

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